tkenichi の日記

毒舌皮肉系恥さらし日記

理論と実験の狭間

物理業界では理論物理と実験物理に並んで計算物理が3つ目の柱として確立しつつあると感じています。おそらくこの流れはシミュレーション技術やコンピュータの性能の向上により、理論と実験(実証)の間の計算○○というのが増えていくのだろうと思います。計算化学、計算分子生物学、計算経済学、などなど。


産業界ではもうずっと前からコンピュータシミュレーションは使われているのですが、ここ数年のPCやビデオカードの性能向上により、産業界でも大きなプロジェクトだけでなくかなり身近なところまで使われるようになったのでは、と思います。デジタルモックアップ、とか最近よく聞く言葉です。


次は教育の世界にも普通に使われるようになるでしょうね。理論の理解を深めるための補助教材であったり、実験の場所や時間を節約するためのものであったりするのが現状かもしれませんが、産業界でこれからますますシミュレーションが使われるようになっていくのであれば、補助的なものとしてではなく、計算科学それ自身についての教育がなされるべきかもしれません。とすると、実験器具としてのシミュレーションソフトウェアの品質管理、信頼度の調査などが必要になってくるでしょう。でもここでは、その問題は深入りせずにおいておきます。


現在はまだシミュレーションをしてみること自身が研究レベルの仕事となっているわけですが、どうしても「やってみたらこうなりました」という「ヤッコー」と俗に言われる論文が大量生産されてしまいます。自分で作ったモデルをシミュレーションさせてみました、とか、自分でシミュレーションソフト作ってみました、とか。シミュレーションをした結果をどのようにまとめることが、アカデミックな世界で認められるのかのコンセンサスがまだできていないような気がしています。四色問題をコンピュータで解いたときも議論になりましたよね。シミュレーションの結果とリアルな実験結果との比較分析ができたり、理論モデルの妥当性の検証などという理論や実験との関連があれば受け入れられやすいのでしょうが。そのように書くべき、ですか?確かごもっともです。それとも、すでにこんなふうに書くべきという業界の常識が既にあるのかな?無知な私に教えてやってください。


自戒を込めて。