リンクの掛け替えはどのようなときに起こるのか
#コメントたくさんついたので、項を改めてみます。
「社会を<モデル>でみる」によると、ワッツとストロガッツのスモールワールド現象に関するシミュレーションモデルは
- 初期状態(レギュラーグラフ)はN個のノードが円周上に等間隔に配置され、全てのノードがもっとも近いk個のノードとリンクしている
- レギュラーグラフの1つのノードについて、時計回りに数えてそのノードから一番近いノードを確率pで別のノードに掛け替える
- 時計回りに順次全てのノードについて上記の掛け替えを行う
- 同じようにして今度は時計回りに数えてそのノードから2番目に近いノードについて確率pで別のノードに掛け替える
- k/2番目に近いノードについてまでこの操作を繰り返す
というシミュレーションを行って、確率pとネットワークのノード間の距離の平均を調べた。
このモデルを知人のネットワークモデルと考えた場合、実際のネットワークの形成のあり方と比較するとあまりにも単純化しているように思える
- 知人関係は減るよりも増える方が多いので、掛け替えよりも追加の方が自然
- 進学、就職、引越しなどリンク構造が大きく変わる状況が存在するので、ノードごとに違いを考えた方がよい
など。しかし、ノード間の距離の平均と言う指標について、現実の世界と比較するのであれば、上記のような単純なシミュレーションでもいいのだろう。シミュレーションを精密化しようとすると、指標に対して何が本質的な効果を及ぼしているのかがかえって見えにくくなってしまう。
たとえば mixiGraph に見られるようなネットワーク構造、株式の所有関係に見られるようなネットワーク構造、などをシミュレーションで再現しようとするならば、それらのネットワーク構造を特徴づける指標を考えないと意味がないだろう。この場合の2例であれば単純に「ハブ」の存在でもいいかもしれない。
リンクの掛け替え、もしくはリンクの追加や削除のメカニズムがどのような式やパラメータで制御されるか、と言う問題はネットワーク構造のどのような指標に対して考察するのかと言うこととセットで考えないといけないだろう。
数学の立場では単純に隣接行列やラプラシアンの固有値の分布を指標として考えてみたいところだが、社会科学的に意味のある指標っていうのは、難しいのかな。でも単純な指標から始めるべきだ、と言う気もする。