tkenichi の日記

毒舌皮肉系恥さらし日記

下流社会

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)

ベストセラーらしい。ここで言う「下流」というのは、単に所得が低いだけでなく、人生の意欲が低い階層のことを言う。具体的には生活水準の意識によって分類しているので、主観的なものではあるが、階層と世代の二つの軸について、意識や嗜好の違いを紹介していてなかなか面白い。今まで中流をターゲットにしていたビジネスモデルも上流と下流に分裂した場合にはそれを変える必要がると言う。

女性消費者はミリオネーゼ系、お嬢系、かまやつ女系、ギャル系、普通のOL系に分かれるという。男性消費者はヤングエグゼクティブ系、ロハス系、SPA!系、フリーター系に分かれるという(私はロハス系みたいだ)。それぞれの類型がどんな特徴を持つかは本を読んでもらうことにして省略するが、この分類は著者の主観的なものだけれども、結構的を得ているような気がする。街で見かける人やショップがターゲットとしている類型はかなり簡単に判別できてしまう。

年代による階層の変化や「パラサイト」や「負け犬」論についてはそれほど新しい議論をしているわけではないが、統計的なデータを挙げて論理を補強している。

面白いのは、階層と世代で「生活の中で大事にしていること」(価値観)がどのように変化しているかということを論じた第5、6章。「自分らしく生きる」というのが、団塊ジュニアの世代では「下」ほど多く、団塊の世代では「上」ほど多い。自分らしさを求めるところが学校や仕事ではなく。サブカルチャーになってきたことが原因だと著者は分析している。実際趣味の分析でも、男性はAV機器、コンサート、テレビゲーム、女性は楽器の演奏、イラスト制作、ダンスなどが「下」ほど多い趣味として挙げられている。結構お金がかかりそうにも思えるが、実際にはPCを含めて、ハードウェアの価格は「下」の階層にとってもそれほど高価なものではなくなってきたということか。団塊ジュニアの男性で「上」ほど多い趣味で顕著なのがサイクリングというのはちょっと意外。趣味が自転車というのは今や贅沢なのか・・・・・。

第7章は階層と性格の分析。コミュニケーション能力の格差で規定されるそうな。耳が痛い。


恣意的な政策が取られなければ、所得分布はベキ分布になるというのが私の見解なので、下流が増えてくるのはある意味当然だと思っている。ただ長い景気の停滞期の結果、下流が増えたという見方もあるだろう。どちらが信憑性があるかモデルで検証してみたいところだ。