乱世を生きる
- 作者: 橋本治
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2005/11/17
- メディア: 新書
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『「わからない」という方法」、『上司は思いつきでものを言う』に続く3部作の完結編。といって何か結論が出ることを期待してはいけない。なにしろ、最後が「後はよろしく」なのだから。
橋本治氏の本の面白いところは、世間一般の視点とは違うところから、概念を再構築しているところ。といっても難しくはなく、逆に非常に明快。この本はその魅力が満載。
戦国時代と現代における「地方」と「中央」の意味の違いから議論は始まる。「勝ち組」「負け組」の二分法によって隠されてしまったものは何か。本来ややこしいはずの郵政改革の問題があんなに単純化されてしまったのはなぜか。改革の議論で忘れ去られたものはなにか。経済はどうしてこんなに難しい問題になったか。スーパーマーケットはなぜ破綻したのか。
問題提起のいくつかは著者なりの答えを提示しているが、むしろ答えよりも、こういう問題があるという意識を持たせてくれたことの方が面白い。じゃあ、どうすんの?という問いかけに対しては、問題が起こったら単純に元に戻せばいいわけではないと「弁証法だぜ人生は」と返して「後はよろしく」。
何かがわかってすっきり、じゃなくて、これから考えよう、と思わせる本。新年に読む本としてはよかったかな。