人間の終焉
- 作者: ビル・マッキベン,山下篤子
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2005/08/23
- メディア: 単行本
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年末から続く、いろいろな問題意識を持つための読書傾向の一環。
センセーショナルな日本語版の題名とは裏腹に、新しいテクノロジーの危険性だけをあおる原理主義的な本とは一線を画す。遺伝子操作、ナノテクノロジー、ロボット工学について、このまま技術革新が続いて行った場合にどうなるのかの思考実験と、テクノロジーをどのように成長から成熟の段階に移行させるのがよいか、どの段階で「もう十分」というべきなのか、についての問題提起を与えている。
遺伝子工学については、倫理や宗教の問題にせず、次の世代の遺伝的特質を選択することの問題を挙げている。
- その選択は一代限りのものでなく、子孫まで受け継がれるものであること
- 遺伝子のデザインを間違えてしまった時、どう責任を取るのか
- 人間そのものを改良することによって、制限を取り除いてしまったら、制限の中で最適を探す類の科学は衰退してしまうだろう
つまりは、選択のテクノロジーが反選択のテクノロジーとして働く可能性がることに警鐘を鳴らしているのである。正直、こういう視点で考えたことはなかった。
たぶん20代の前半でこの本を読んだら、無意識のうちに反発していただろうと思う。
著者も40代前半。個人として成長期から成熟期に移行する時に、科学技術や文明の成熟について考えるのは自然なことなのかもしれない。
本文中にも挙げられているが、江戸時代の日本というのは、成熟した社会のモデルとしては、歴史上あまり類のないものであり、進歩や発展をどのようにコントロールするかのひとつの例になるかもしれない。