空間知能化のデザイン
- 作者: 橋本秀紀,渡辺朗子
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 2004/12
- メディア: 単行本
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空間知能化、とは耳慣れない言葉だが、空間にネットワーク配置されたセンサー群と、情報提示装置、そしてロボティクスによって人間に対して働きかけを行うことにで、人間の知的営みを空間全体でサポートするためのコンセプトのこと。この本では現在の技術をどう組み合わせてこのコンセプトを実現するかというデザイン(もちろん設計の意味)を提示している。
その中でよく現れるキーワードがDIND(分散知能化ネットワークデバイス)である。簡単に言うとネットワークを介してつながったセンサーのことである。それがロボティクスとつながるということは、ロボットの視覚(目)、聴覚(耳)、物理制御(手足の動き)が空間内に分散して配置されるということ。人間に似せようとするロボットとは別の進化の方向で興味深い。ITの要素技術をルネサンスになぞらえ、要素技術のインテグレーションとしての空間知能化をバロックになぞらえているところは、面白い対比だと思う。
将来の社会に応じたデザインや、プロトタイプのG-SEC Labから得られた教訓などを例示しているのと同時に、筆者ら自身のデザインとして「iSpaceコンシェルジェ」をかなり具体的にフレームワークやサービス例なども紹介してある。
本の中で出てきた要素技術などはすでに注目していたものも多かったが、それらを次世代のシステムとしてどのように工学的にデザインするか、というところまでは考えきれていなかった。この本で現在の研究がどのあたりまで進んでいるかを知ることができたのは収穫。