あの人と和解する

あの人と和解する ―仲直りの心理学 (集英社新書)

和解の心理学についての本。人間関係のコンフリクトの解決を妥協ではなく超越して関係を再生させるトランセンド法を紹介している。理想論、観念論ではなくて、実際のカウンセリングの実例を挙げて説明しているので、身近に問題を抱えている人は参考にしやすいと思う。

最後の章は他人との諍いの根底にある自己とのコンフリクトをいかにして解決していくのか、という話。自分自身に折り合いをつけるためのいくつかの身近な方法を紹介している。相手のことを「わかる」ことは、自分との違いを「分ける」ことだと言う。共感すると言うことは、相手を尊重して受け入れることだと言う。

こういう一般論を論じている本は人間関係論やカウンセリングの本でたくさんあると思うけど、この本は多数のケーススタディを紹介しているところが面白いかな。会社の人間関係、親子間、夫婦間の葛藤、学校でのいじめ、いろんな国の人が参加した文化的背景が違う人の間で起こった問題をどのように解決したか、などなど。西洋的な良い悪い、または賛成反対の二元主義の問題点を指摘して、寄り合い方式のような旧来の日本的な和解の方法を見直そうと提案している。

要約するとなんだか説教くさい本かと思われるかもしれないけど、カウンセリングの専門家らしく、押し付けがましくは感じない。前半のコンフリクトの解決方法、というのは結局のところ弁証法なのね、と思って読んでいました。