スモールワールド・ネットワーク
スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法
- 作者: ダンカンワッツ,Duncan J. Watts,辻竜平,友知政樹
- 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
- 発売日: 2004/10
- メディア: 単行本
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週末にダンカンワッツの著書を続けて読む。これは一般向けに書かれた啓蒙書。ネットワーク科学の簡単な歴史と、スモールワールドネットワーク、スケールフリーネットワークの発見、その応用など。
最初は電力供給ネットワークやミルグラムのスモールワールド問題などを紹介しながら、著者とストロガッツ氏との出会い、ネットワークの研究を始めるまでのエピソードが中心。題名でもあるスモールワールドネットワーク現象の発見のプロセスの紹介では、αモデル、βモデル(いわゆる有名な環状のグラフからランダムにリンクを張り替えるモデル)について解説がある。αモデルにおける、パスの長さの臨界現象の発見から、クラスタ係数との関係を経て、スモールワールドネットワークの概念へたどりつく。
次にバラバシらが発見したスケールフリーネットワークの解説。一般的な説明に加えて、システムの有限性からカットオフ領域があることや、必ずしもスケールフリーにならないネットワークの存在に関する注意も述べられている。
後半は伝染病の拡散モデルからネットワーク上のパーコレーションの話、意思決定におけるバブル現象と外部性の話から、閾値モデル、カスケードが発生するメカニズムの紹介など。
最後に大惨事からの回復におけるネットワークが果たした役割として、トヨタ=アイシン危機と同時多発テロを例に説明している。その中で階層構造を持ったネットワークの情報過密化を防ぐ方法としてマルチスケールネットワークが紹介されている。
全体的に原書の書かれた時点(2003年)でのネットワーク科学に関するトピックを網羅してある、という印象。一般向けに書かれているせいか、P2Pネットワーク、キャズムを越えてイノベーションを作り出すための条件、階層組織論まで取り上げられていて、それはそれで面白いのだけれど、中途半端な感じはする。
でも面白い。ネットワーク科学の本でまず何を読むかと聞かれたら、この本と、バラバシの「新ネットワーク思考」を薦めます。
個人的に興味を持ったのは、所属関係ネットワークで集団ネットワークと行為者ネットワークの2つの見方があると言うところ。それらの関係を詳しく調べると面白そう。もうひとつは、閾値モデル。リンクの数以外に閾値などのノードの属性があるときにネットワークのダイナミクスを考えてみるのも面白そうだ。