tkenichi の日記

毒舌皮肉系恥さらし日記

プリンストン高等研究所物語

プリンストン高等研究所物語

プリンストン高等研究所物語

これは研究所の歴史をつづったものではなく、1946年ごろのプリンストンを舞台にした小説である。登場人物はフォン・ノイマンアインシュタインゲーデルオッペンハイマー、ヴァイル、などとくれば、この手の科学読み物好きとしてはこたえられない。ただし、著者が前書きで述べているようにこの作品はフィクションである。フィクションといってもすべてが全て虚構なのではなく、人々と出来事の時間を移して語られているとのことだ。


内容は数学や物理そのものの内容よりも登場人物の間の人間関係やエピソードが中心になっている。エピソードの中心となるのはゲーデルの教授昇進のために画策する人々の物語と、フォン・ノイマンが計算機の製作をするという提案に対する研究所の人々の葛藤。とくに後者のエピソードでは、プリンストン高等研究所が純粋に理論的な研究を行うために設立されたという経緯もあり、計算機の製作というのが単なる工学的な意味でしか理解されていなかった状況を、どうにかプロジェクトの実現にこぎつけるまでが語られていてとても面白い。登場人物同士の会話や政治的な駆け引きはフィクションも交じっているだろうが、研究所の雰囲気や主人公である偉大な科学者たちの性格も知ることができて楽しめます。

科学好きの高校生、学部生に特におすすめです。