tkenichi の日記

毒舌皮肉系恥さらし日記

クリティカルシンキング(実践篇)

クリティカルシンキング・実践篇―あなたの思考をガイドするプラス50の原則

クリティカルシンキング・実践篇―あなたの思考をガイドするプラス50の原則

  • 作者: E.B.ゼックミスタ,J.E.ジョンソン,Eugene B. Zechmeister,James E Johnson,宮元博章,谷口高士,道田泰司,菊池聡
  • 出版社/メーカー: 北大路書房
  • 発売日: 1997/09
  • メディア: 単行本
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半年以上前に読んだ入門篇 クリティカルシンキング(入門編) - tkenichiの日記 の続編。

原著では1冊になっていたものを訳書では2冊に分けたらしい(だから6章からはじまっているし、クリシン原則も41から)。「実践篇」といっても特に構成が変わるわけではないが、実際の例を挙げながらクリティカルシンキングで物事を解決したり意思決定したり議論したりする方法を紹介している。

第6章は「自分は何を知っているかを知る」と言う題でメタ認知の重要性を説く。メタ認知とは自分の知識や判断についての認知のことであり、課題などの学習法などの話と、なぜ「わかったつもり」(錯知)になってしまうかと言う話が中心。思考のあり方を細かいところに注意を払わずに、決まりきったやり方で行動する傾向をマインドレス、反対に細かな情報まで吟味して、互いの関係を整理して、よく考えて行動する傾向をマインドフル、と分類し、マインドレスな思考が錯知を生むとしている。

第7章「問題を解決する」は問題の解き方というよりもむしろ、問題に関係する情報の整理の仕方が中心。確かに問題の条件を整理し、複雑な問題を簡単な問題に帰着させ、時には別の角度から問題を眺めなおす、なんてことがうまくできたら問題は解決したも同然。

第8章「意志決定する」は明確な正解など存在しないような複雑な問題についていかにして決定するかということ。これも問題の定義の仕方、案の提示と評価の方法論。および意志決定した結果を実行するための方法や間違っていたときにどうやって修正するかについても。

第9章「よい議論と悪い議論」は論理の練習と、演繹的議論と帰納的議論の違い、帰納的議論をいかにして確実性を上げるかという話。帰納的な議論の3つの規準を引用しておこう。

  • 前提が容認可能であること
  • 前提は結論と関連性を持たねばならない
  • 前提は結論のための十分な根拠がなくてはならない

これをもとにさまざまな誤った議論の例を挙げている。他山の石としよう。


クリティカルシンキングと言うと、最近の教育法の流行みたいな印象があるが、議論されている内容は実は古くからある普遍的な話が多い。メタ認知はギリシア時代のソクラテスの「無知の知」に通じているし、問題解決法の下位目標分析はデカルトの還元主義に他ならない。しかし論理学、思想史、意思決定論など、別々の学問領域に散らばっているものを、自分の思考のための方法論としてまとめ上げているところに意味があるのかな。人は(慣れていることについては特に)思考を節約しがち(マインドレス化)なので、それを戒める意味でクリシン原則を時々見直すのはよさそうです。


最後にいくつか特に(私が)覚えておきたいクリシン原則をいくつかピックアップ。

  • 記憶を過信してはならない。記憶は物事の正確なコピーではなく、推論によって再構成されたものなのだ。
  • 問題解決に使える知識が不活性のまま眠っていないかチェックせよ。
  • あと知恵バイアスに注意せよ。あとになってから思うほど、人は事前に結果を予測できるものではない。
  • 権威へのアピールに注意せよ。ある主張をする人が、その分野の専門家なのかと言う点に注意を向けよ。