tkenichi の日記

毒舌皮肉系恥さらし日記

システムの科学

新版 システムの科学

新版 システムの科学

新年なので、たまには古典を読むのもいいでしょう。

著者のサイモンはコンピュータ科学、意思決定論など広範な研究分野を持ち、ノーベル経済学賞チューリング賞を受賞している20世紀後半の知の巨人。第3版も出版されているんだけど、図書館で手に入ったのは第2版。

題名は「システムの科学」となっているが、人工物で自然をどれだけシミュレートできるか、経済主体と合理性の問題、記憶と学習についての考察、人工物のデザインの方法、複雑性をどのようにして扱うか、などサイモンの頭の中のようにテーマは広範囲にわたり、しかも内容は深い。文体もそれほど読みやすいわけでもないので、どれだけ理解しているかは未知数。おそらく読んでいる時点で自分が興味を持っている分野に一番近いところで、サイモンの知に少しずつ近づいていくようなものなのだろう。そういう意味で時間をおいて何度も読み返すといい本なのだろうと思う。


それでも現時点で気になったところを少しまとめてみよう。

システムデザインの話はどうしてもコンピュータソフトウェア開発の視点から見てしまうのだけれど、望ましい人工物をどのように設計するか、望ましい代替案をどのようにして探索するか、複雑な構造をいかにしてシステムの中に表現するか、など決してソフトウェア科学の文脈で語っていないにもかかわらず、通じているところは面白い。

複雑性がしばしば階層的な形態をとることを説明した7章も、物理的、生物的、社会的に複雑な構造には階層的な形態があることを見る(多分これぐらいは誰でも気づく)が、そこから、階層的なシステムだけが複雑なシステムに発展できるという進化論的な説明をしてしまうところがすごい。さらに準分解可能システムを定義し、多くの階層的なシステムが準分解可能性を持つことを示すことで、複雑なシステムを扱うための方法に示唆を与えている。