ダイヤモンドはなぜ美しい?
ダイヤモンドはなぜ美しい?―離散調和解析入門 (シュプリンガー数学リーディングス)
- 作者: 砂田利一
- 出版社/メーカー: シュプリンガージャパン
- 発売日: 2006/09
- メディア: 単行本
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このシリーズ(シュプリンガー数学リーディングス)を読むのは実は初めてなのですが、学部レベルの前提知識で、普通の教科書とはちょっと違う視点でひとつのテーマを取り上げる様な位置づけのようです。リーディングと銘打っているだけあって、読み物として(もちろん数学の本なので数式や証明は出てきますけど)楽しめます。
ダイヤモンドの話、と聞いて物性物理、光学シミュレーションなどを想像するかもしれないけれど、これは結晶構造の格子の話。結晶構造の対称性から群構造の話になって、蜂の巣構造やダイヤモンドの原子配列がなぜ「美しい」かをいわゆる最小作用の原理から数学的に導いています。発展的話題としてはルート系やランダムウォークと調和解析の関係もあって、最後の方にはグロモフ理論のちょっとした紹介もあったりして、盛りだくさんな内容になっています。
グレゴリー・ニュートン問題
1つの球に、同じサイズの球が13個互いに重なり合うことなく接することができるか
(グラフ理論を使ってできないこと、つまり互いに重なり合うことなく接することのできるのは最大12個、が1953年に Schutte と van der Waerden によって完全に証明された)からルート系の話が出てくる第4章が一番面白かったです。球じゃなくて、正四面体だと1点の周りに同じサイズの正四面体が互いに重なり合わないように集めることのできる最大個数を求める問題が(著者の知る限り)まだ解けていないなんていうのも面白いです。正20面体の面と中心からなる四面体の内部に正四面体を作ることによって、少なくとも20個は集めることができるそうです。