tkenichi の日記

毒舌皮肉系恥さらし日記

高学歴ノーリターン

高学歴ノーリターン The School Record Dose Not Pay (ペーパーバックス)

高学歴ノーリターン The School Record Dose Not Pay (ペーパーバックス)

2005年11月に出た本。この手の本は旬なうちに読まないと意味がないので、ギリギリといったところか。

巷でよく言われているように、学歴と収入にはそれほど相関はない、出身大学の価値が崩壊しつつある、ということを筆者の周りの実例を交えて紹介している。所得が階層を決める社会においては「ギャンブル社会」が到来すると警鐘を鳴らしている。しかし最後には筆者の考える「学歴社会」崩壊後の社会の価値観の構築の提案として、学歴を多様な価値観の中の一つとし、さらに常にアップデートできるものとして評価すべきだ、としている。

中央官庁や大企業に勤める学歴エリートが、劣悪な労働条件に対して怒りを表さないのが存在する理由を、「金持ちの子弟だから」とする分析はある意味極端だけど、当たっているかもしれない。その上で、最も恵まれていない学歴エリートをEEM (Effort,Educational Investment,Middle) と呼んで、その立ち位置を分析している。学歴の価値が高かった時期に教育に投資し、努力を重ねた結果、その成果を回収する時期に学歴の価値が低下していると。

救いなのは、学歴(というよりも広い意味での教育)を無価値なものと切り捨てるのではなく、現在持っている学歴の効用や、学歴と言う基準の必要性を挙げていること。特に、多様な価値観、努力をすることの重要性、を強調しているのは好感を持った。


これを読んでのいくつかメモ。

  • 公務員はマスコミ等の批判の対象とされているが、なぜ子供につかせたい職業のランキングで常に上位を保っているのか?
  • この本では高学歴を絶対評価(東大卒や博士号とか)で定義しているが、大学全入時代で学歴そのものがインフレ化している(同年代のうちの「高学歴取得者」の割合の上昇)ことを考慮すれば、結果は変わってこないか?
  • 格差研究については労働経済学者と社会学者では調査の元データが違う。