tkenichi の日記

毒舌皮肉系恥さらし日記

「リバタリアン宣言」

リバタリアン宣言 (朝日新書)

リバタリアン宣言 (朝日新書)


リバタリアンとはリバタリアリズムを支持する人のこと。リバタリアリズムとは、社会権を否定し自由権のみ肯定するもので、後見主義的な国家の役割を否定する自由至上主義のこと。多くのリバタリアン夜警国家を理想とするが、著者を含む一部の過激なリバタリアンは無政府資本主義を信奉しているそうだ。

いわゆるリベラルと呼ばれる層は国家による富の再配分を許し、失業・貧困・教育問題にも積極的に関与して、個人の社会的自由を保障しようとするが、それとリバタリアリズムは一線を画す。特に著者は年金・福祉・教育などの制度を国が整備して行うべきだという考えを「クニガキチント」と呼び、その問題点を指摘し、精神の自由の束縛へとつながる危険思想だと断じている。

医療制度、公的年金、義務教育などについてもリバタリアンの立場から現状の制度の問題点を挙げている。若干議論されているたとえ話が極端だと思える部分もあるけれど、疾病リスクの高い生き方をするかどうか、人生における消費パターンの選択、などは自由であるべきだという考え方は共感する。ただ、福祉や教育の充実を慈善事業やNPOに期待すればよいという考え方は楽観的すぎると思う。警察機能を民間に移転したときに、金持ちを優遇する警備会社は民度の高い人々の抗議により淘汰されるだろうという考え方も甘いと思う。

夜警国家から無政府に至る道についての著者の予想もかなり夢物語に近いものだと思うけれど、国籍という社会契約を自動車保険を選ぶように個人が主体的に自由に選ぶことができる、という考え方は面白い。

著者の専門は経済学らしいのだが、イデオロギー的な話だけじゃなくて、経済学の視点からモデルや実証的な分析があっても良いのではと思う。