ブルバキとグロタンディーク
- 作者: アミール・D・アクゼル,水谷淳
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2007/10/18
- メディア: ハードカバー
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かつての数学少年はこの物語を久しぶりにわくわくして読んだのでした。
ブルバキについてはいろいろなエピソードが知られているが、この本では、その由来、内部での葛藤、その遺産まで一通り紹介してある。グロタンディークとのかかわりという点に重点をおかれているので、恣意的に選ばれたエピソードが多く、偏った見方をしているかもしれないけれど、歴史書じゃないのでそれはいいとしよう。ブルバキが共通の教科書を作ろうという試みから始まったことは興味深い。
グロタンディークについては数学界に登場するまでの生い立ちが一通り紹介されており、改めて彼の数学とその生い立ちとはなんらかの関係があった、と感じざるを得ない。収容所暮らしの少年時代、その後もヨーロッパ中を転々とし、測度論を自力で編み出してしまうこと、など。若いころから環境や人脈に恵まれたアンドレ・ヴェイユについての記述とはあまりにも対比的に書いている。あえて天才タイプと秀才タイプで書き分けを強調したのは著者の脚色もあるだろうな。
数学の話はそれほど深入りしていないけれど、レヴィ=ストロースが親族構造の分析を行うときに、アンドレ・ヴェイユが数学的に協力したというエピソードはかなり詳しく書いてあり、面白かった。ただそのような、数学と文化人類学との交流が構造主義を生んだかのような解釈は誇張もあると思う。