不謹慎な経済学
- 作者: 田中秀臣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/02/21
- メディア: 単行本
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「ヤバい経済学」や「まっとうな経済学」と比較すると、一つ一つの章が短めで、話題が豊富なのはいいけれど、書き散らかしている感じがする。経済学におけるさまざまな説を紹介しているので、専門家には面白いのだろうけれど、結論が出てくる道筋を再現しているのではなく、結論だけを知識としてあげているのがちょっと残念でした。
とはいっても、テロ、ボランティア、スポーツイベントなど幅広いテーマについて、豊富な知識に基づいての語り口は厭きさせない。曰く(孫引きもあるけど)
- 教育も豊かさも、テロを解決できない
- 「ツンデレ」の原型は谷崎潤一郎『痴人の愛』にある
- 天下りは市場が合理的に提供している報酬
- ニートは役人の利権を生むだけだ
- ボランティアの強制は事実上の増税で、かえって経済格差を拡大させる
- 日本の経済格差の根源は景気である
- 「ヤバい経済学」のダブナーはアベレージヒッター、レヴィットは一発屋
- 日本銀行は何をやっても責任を取らない
- 二・二六事件の結果、昭和恐慌からの脱出に失敗した
- 政府の円安介入は、「将来インフレになる」と同じ意味を持つ
現在の知識人の態度を三木清の言説を通じて批判したり、二・二六事件の経済的な意味を解釈したり(この章が一番面白かった!)と、むしろまともな議論をしているような気がする。逆に言えば議論に新鮮味がないし、リフレ派という著者のスタンスで解釈しているという点もある。「不謹慎」などというイロモノ的な売り方をせずに、これが経済学の手法なのだと真っ向勝負してほしかったなあ。