tkenichi の日記

毒舌皮肉系恥さらし日記

新しい家族のための経済学

10年前に出た女性のための働き方を経済学の立場から論じたもの。学問の世界からの提言だが、10年前の認識や予測が現在当たっているのかどうか、政治や社会がこういう議論を受けてどう変わったのか、を意識しながら読んでみる。

女性の労働環境や少子化に関する問題について、現在でも問題そのものはまだ解決していない。本文中で触れられている山一證券の破綻の話をサブプライムローンの話に変えれば、そのまま通用してしまいそう。それは著者の認識が当たっていたということと、社会が問題の解決を先送りしてきたということの両方を意味している。もちろんまったく進展していないというわけではなく、徐々に変化が起きつつあるのは確かなのだが。

いくつか興味深いデータを紹介しているのでメモ。

  1. 戦後の日本の女性労働力率は統計上はそれほど上昇していないが、家庭従業者が減って雇用就業者が増えたためである(P34)
  2. 福祉に関する国民負担率は経済成長率の間の相関関係はない(P45)
  3. 平均勤続年数の男女の差は日本が他の国に比べて大きい(P101)
  4. 就業形態別有効求人数(P168)

(3)番目のデータはむしろ日本の男性が長すぎる(調査時1996年)のが原因だとも言えるので、ここ数年でデータがどう変わったのか興味あるなあ。
(4)番目のデータはここではパートタイム求人の増加に焦点を当てているけど、一般求人と一般求職の山谷の関係が、90年代後半に崩れているのはなぜだろう?

この10年間でさらに若年層の雇用の問題や年金問題がクローズアップされたが、これらについても結局はこの本でも論じている少子化による人口構造の変化の問題が根底にあるのでしょうね。少子化「問題」を解決するというアプローチなのではなく、少子高齢化を前提にした制度設計が必要なのかもしれない。