tkenichi の日記

毒舌皮肉系恥さらし日記

学力低下は錯覚である

学力低下は錯覚である

学力低下は錯覚である

教える立場の現場の感覚としては、学生の学力低下は実感していることだろう。ある特定の学校だけでなく、すべての大学で。

それが正しいとしても、学力がたとえ低下していなくても、教師がそう感じてしまうことは起こりうる。一種の統計のマジックだが、18歳人口が減ったから上位校にも従来なら下位の大学の学生が入学してくるようになったから、と言う。

ある大学を定点観測していると、18歳人口の現象とともに、予備校の発表する大学入試の偏差値は急落する。その理由を考えたことのある人にとっては、ここでの結論はそれほど驚くことではない。ただし、一般的に言われている議論だと、そういう可能性があることすら抜け落ちていることがあり、間違った前提から政策が議論されている可能性もあるので要注意だろう。

理工系離れについても同様の統計マジックだそうだ。つまり、男子学生に限った条件付確率で言うと、理工系離れは起きていない。女子が4年制の大学に進むようになったから、見かけ上割合が低下したとのこと。そこで女性エンジニアを増やすような政策を考えるならわかるが、日本のものづくりの危機のように言うのは確かに騒ぎすぎだろうと思う。

私個人としてはゆとり教育は反対だし、それによって学力低下は起きていると思うが、見かけ上の学力低下はそれだけが原因ではないことを知ることは有意義だった。この手の本には珍しく、官公庁が出している調査の一次資料を分析して引用してあるので、資料集としても価値がある。ただし、教育手法などについては、著者は専門家ではないため独善的な部分もある。