偶然のチカラ
- 作者: 植島啓司
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2007/10/17
- メディア: 新書
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書店に平積みしていたので読んでみる。偶然のチカラ、と言う題名も面白そう。行動経済学の影響も受けているのかな、と思って読み始めた。
うーん、なんか違う。人間が確率的な事象に対して、うまく判断できないことが多い、と言う認識はいいけれど。「自分で選択するべからず」「自分の身に起こったことをすべて必然と考える」「いい流れには黙って従う」って、思考停止することのお墨付きを与えているみたい。もちろん袋小路に入ってしまっている人には、そこから抜けることが福音だったりもするわけだし、祭礼がそういう性格のものであることはわかるけれど、あまりにも短絡的過ぎないか。
確率論にしても、「コインを二度投げて、一度でも表が出る確率は何%か」を簡単ではない問題だとして紹介しているところも、かなり違和感あるなあ。
ルーレットについて「たまたま出た数字」を紹介して、その数字の偏りや法則性を後付で議論しているところもある。ランダムな数列から、適当な規則をでっち上げることなんて簡単だし、むしろだましのテクニックとして常套。
人間の認識や推測の限界を議論するなら、限界があるという1次の議論で終わらずに、限界に対して人間はどう振舞う傾向にあって、それを踏まえてどう行動すべきかというメタな思考にまで踏み込んで欲しかったなあ。
読者をあえてからかっているのか大真面目なのかはわからないけれど、こういうのにすごく距離を感じたことで、自分が合理主義者だということが再認識できたのでした。