tkenichi の日記

毒舌皮肉系恥さらし日記

地球温暖化の予測は「正しい」か?

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地球温暖化の予測は「正しい」か?―不確かな未来に科学が挑む(DOJIN選書20)

地球温暖化の予測は「正しい」か?―不確かな未来に科学が挑む(DOJIN選書20)

以前地球温暖化懐疑論者の対談集を読んだ (暴走する「地球温暖化」論 - tkenichiの日記) けど、こちらは科学者として温暖化の予測をしている人の著作。研究者が自分の研究内容を一般社会に紹介する内容で、これほど誠実なものもないだろう。地球温暖化というもはや非常に政治的になってしまったテーマに対して、科学ではどこまでがわかっていて、どこからがわからないのか、予測の精度の意味、などを大学の学部程度の予備知識で理解できるように詳しく説明している。

コンピュータシミュレーションで解く気候モデルについても、単純な方程式の組合せでできていること、モデルでは表現できない現象についてはパラメータとして入れること、そのパラメータの決め方で研究者によってモデルが少しずつ違うこと、複数のモデルに温暖化の共通な傾向があること、科学者がその精度を上げるために日々努力していること、などわかりやすく、過度に単純化せずに説明しているのはとてもいい。

未来を予測することは難しく、不確実なことを受け入れなくてはならない。科学者はその精度を上げるために努力し、政治は不確実な情報から難しい意思決定を行い、それを社会システムとして実装する。それぞれに異なる意味での不確実性があるが、人類の文明の変革がうまくできるかどうか、人間の英知が試されているのかもしれない。

個人的な興味としては、モデルの選択における over-fitting の問題に興味を持った。どうしても過去の観測データに合わせてモデルを最適化するため、過去の現象はよく説明できるが、それが未来の現象をどれだけ精度よく表現できるかどうかわからない。過去の観測データのノイズをどう処理するのかも難しいのだろう。統計モデルにおける AIC のようなモデルの複雑さを最適化する指標はあるのだろうか??