数学最前線を担う挑戦者たち

数学最前線をになう挑戦者たち―難問の解決、ゲーム理論の展開 (数学を切りひらいた人びと)

E.T.ベルの有名な「数学をつくった人びと」シリーズの現代版のようなもの。人となりをドラマティックに記述するのではなく、むしろ淡々と足跡や業績を紹介すると言った本です。この本もシリーズになっていて、この第５冊目は２０世紀の数学者の紹介ですが、その選択はかなり個性的で、10人のうち、フィールズ賞受賞者はヤウ・シントゥンと特別賞のアンドリュー・ワイルズだけ。ジョン・ナッシュやスティーヴン・ホーキングなど、数学者と言うよりもむしろ経済学者や物理学者として有名な人も入っているし、ネットワークやウェーブレット、暗号など現代情報社会の基盤となっている技術に貢献した応用数学的な人が選ばれているのも特徴的です。ファン・チュン、セアラ・フラナリーといったアカデミックなところ以外の場所で活躍している人の業績を紹介することで、社会とのつながりを強く意識しているようにも感じられました。

高校生ぐらいをターゲットにしているせいか、数学の難しいところの説明はあまり深く触れられていないので、ちょっと物足りないところもあります。もう一歩踏み込んで、定理そのものの説明や、理論の具体例の説明があれば数学本としてもっと楽しめるものになったと思います。