地球と一緒に頭も冷やせ！

地球と一緒に頭も冷やせ!　温暖化問題を問い直す

人類の二酸化炭素排出が地球温暖化の原因になったことを否定しているわけではない。議論のテーマとしては、二酸化炭素削減に使うお金が多すぎないかと言うこと。温暖化の結果何が起こるかと言った科学的な議論ももちろんあるけれど、それを防ごうとするお金を他の事に使ったほうが人類としての便益は大きいんじゃないか。二酸化炭素１トン放出することでもたらす被害の限界費用は２ドルが妥当な推計値だと言われているらしいが、京都議定書の元で削減するにはイギリスの場合２３ドルかかるのだそうな。推計によると二酸化炭素削減で得られる便益が費用を上回るのは２２世紀後半だそうだ。

二酸化炭素削減、環境保護というのは、それを行うことが「良いこと」とされている。（この本はその論点に立っていないが）地球温暖化が人類の二酸化炭素排出とは無関係と言う説もあるけれど、一般には将来の地球を守るための緊急課題だと（少なくともアル・ゴアの言っていることを信じている人には）思われていて、そのためには人類として最優先で行動すべきだとされている。この本は良いことではあっても、最優先で解決すべきことではない、と言うのを繰り返し説明している。データも豊富で説得力があるように思われる。

異常気象による洪水などの自然災害、温暖化による飢餓、治水政策については、二酸化炭素削減と言う気候政策で解決するのではなく、もっと直接的な方法で行うべきと言うのは賛成。二酸化炭素の排出権取引でお金を使うよりも、研究開発に当てるべきだと言うのも賛成。まだこの問題は市場に任せておけば解決できると言う段階ではないだろう。将来の便益のための投資であるならば、今は研究開発に投資する方が効率的なのではないか。