気候大異変
- 作者: 江守正多,NHK「気候大異変」取材班
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2006/11
- メディア: 単行本
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これは地球温暖化問題に対して、深刻さを強調する立場の本。スーパーコンピュータによる気象予測の精度が上がってきたことと、それで異常な気象現象が予想できるようになってきたことを述べている。研究者へのインタビューでは、気候の予測は難しく説明できる現象は増えてきているが100%予測できるものではない、といったかなり慎重な発言が多いのに対して、地の文では災害の記述などセンセーショナルな傾向がある。テレビ番組だから仕方がないのだろう。
人為的な温室効果ガスの排出がなければ20世紀末の温度上昇が説明できない、というレベルまで気候モデルの精度が上がってきたということも紹介している。科学者の立場からすれば、予測のぶれは精度が悪かったことを意味していて徐々に修正して精度が上がっている、というのはある意味正直な見解だと思う。
温度上昇によって引き起こされる問題については、環境省のチーム・マイナス6%に代表される、ひとりひとりの取り組みが大事という立場。それ以外に国としてどうすべきなのか、国際関係においてどう意見を集約していくのかについてはほとんど何も触れていない。
以下は個人的な感想。熱波の襲来、砂漠化、旱魃、熱帯病の流行など、ここで挙げられている災害はそれぞれ大きな問題で、確かに温暖化が原因の可能性があるが、それを現時点の技術で二酸化炭素の排出削減で解決しようとするのは、コストが高いという考えは変わらない。対策を個人の活動に帰着させようとするのは、運動としては大事なのだろうけれど、手段としてはあまり感心しない。個人的な主張は、ひとつ前の日記に書いた『地球と一緒に頭も冷やせ!』と同じで、今は災害に対しては対症療法、温暖化に関しては研究開発に力を入れた方がいいという立場。ただし、全世界的なコンセンサスがどこに落ち着くのかはわからない。難しいですね・・・。