クラウド化する世界
- 作者: ニコラス・G・カー,Nicholas Carr,村上彩
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2008/10/10
- メディア: ハードカバー
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副題に「ビジネスモデル構築の大転換」とあるように、クラウドによって世界がどのように変わるかについて論じたもの。クラウドコンピューティングの開発者向けの本ではない。
いわゆる「クラウド」なサービスがたくさん出てきていて、その便利さやそれがもたらす未来に興奮してしまいがちだが、この著者は動力について「電気」がもたらしたものを、現在の様にシステム化されたその経緯をふりかえることで、現在起こっている情報の「クラウド」化がもたらすものを探っていく。テクノロジーが発展してく方向とその結果を決めるのは、科学や工学の進歩ではなく、サービスを製造するコストに及ぼすテクノロジーの影響だというのは、電気においても、情報においても同じだろう。
この本に明示的に書かれているわけではないが、有名な発明家エジソンが電気についてもたらした影響と、コンピュータにビル・ゲイツがもたらした影響が、相似形のように感じられた。電球を発明し電気というインフラを整備しようとしたが、直流電流にこだわり、中央発電所のシステムに抵抗したエジソン。PCを普及させ、ソフトウェアビジネスで時代を築いたビル・ゲイツにとって、エジソンにとっての中央発電所がクラウドなのかもしれない。
この本によると、電化による生産性の向上が、技術の担い手が熟練工から知的労働者に移り、その結果専門的な教育を必要とし、余暇における大衆文化が電気を消費した。同じことは繰り返すのだろう。技術の担い手はさらに高い教育を要求され、クラウド化で得られたリソースは人々の嗜好で消費される。
技術的なトレンドを知る以上に未来を考えるための本。おすすめ。