ビジネスチャンス発見の技術
- 作者: 大澤幸生
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2004/02/07
- メディア: 単行本
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マーケティングは経営の分野の話だと思っていたので、エンジニアリング的な手法でやっているところがとても新鮮。でもマーケティングの本と思って読むと期待外れになるかもしれない。「ビジネスチャンス」発見、ではなくて、ビジネス(における)「チャンス発見」なのだ。知識や答えを求めるものではなく、人の心の中や、マーケットの中に無意識にある関心を浮かび上がらせる技術、とでも言ったらいいだろうか。仮説を検証するためのものではなく、よい仮説を出すためのブレインストーミングのためのツールである。
ここで紹介されているキーグラフという手法では、元のデータは文章であり、それを単語に分けて関連性をグラフ化*1する。キーグラフでは、普通、大きなクラスタと、それをつなぐ橋のようなものができ、橋の部分が、今まで見逃してきたチャンスにつながると考えられる。ここでは可視化するだけでなく、そのグラフを元に議論している時の視線を追跡して、ディスカッションしている人の関心を解析したりしている。これは数理の発想では出てこないですね。そこから「気づき」を生み出して、シナリオを作り出していく実例が多く紹介されている。それらはビジネスの現場にいる人でアイディアを出すのに苦労している多くの人に参考になりそう。少なくとも私にはとても参考になった。
キーグラフと同様に、コミュニケーションのパス構造も議論しているが、階層構造の中の非階層なコミュニティパスが、組織を活性化させるという話は、この本でも少し言及されているスモールワールドネットワークの類似のようでおもしろい。完全にフラットだったり、カオスだったりするのではなく、秩序や構造が少し崩れている、と言うのがもっとも活性化される形態なのかもしれない。
*1:頂点と辺のグラフの方