tkenichi の日記

毒舌皮肉系恥さらし日記

Grassmann への射影

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Courant の min-max 原理の話の続き。数値計算の教科書に書いていることを幾何的に言い直してみるために、ちょっと準備(というか自分の記憶をたどって復習)。

n次元空間の中のk次元部分空間を表すのに、k次元の直交基をn行k列の行列と考えて、Stiefel 多様体を行列であらわした。

 V_{n,k} = \{ R \in \mbox{Mat}(n,k) | R^{T} R = 1_k \}

k次元の部分空間を表すには直交基の取り方分だけの自由度がある。直交基のとり方によらないものとしては射影行列を考えることができる。従って部分空間全体からなる集合である Grassmann 多様体は次のように表せる。

 G_{n,k} = \{ Q \in \mbox{Mat}(n,n) | Q^{T} = Q, Q^{2} = Q, \mbox{rank} Q = k \}

Stiefel 多様体から Grassmann 多様体へは

 V_{n,k} \ni R \to R R^{T} \in G_{n,k}

という対応がある。これはファイバー束になっていて、局所的な切断は、n個の列ベクトルからk個の1次独立なものをとって(n個からk個の選び方でGrassmann多様体の開集合となり全体で開被覆になる)、k個のベクトルをGram-Schmidt直交化すれば  V_{n,k} の元になることで得られる。

対称行列 A について  R^{T}AR固有ベクトル v とする。 Q = R R^{T} とおいたとき、 Rv Q^{T}AQ の同じ固有値固有ベクトルになる。この対応により、固有値の最大値(または最小値)を探すための部分空間列を Grassmann 多様体の列と考えることができる。


ちょっと脱線。量子力学では、ブラベクトル、ケットベクトルという言い方をするが、ブラベクトルが

 <\alpha | \alpha> = 1

と規格化されているとき、

 P_{\alpha} = |\alpha><\alpha|

が射影演算子になる、ということからブラベクトルと Stiefel 多様体の元を対応させると似たようなことが言えそうだ。