tkenichi の日記

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数覚とは何か?

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数覚とは何か?―心が数を創り、操る仕組み

数覚とは何か?―心が数を創り、操る仕組み

不勉強にして「数覚」という言葉は知りませんでした。数学を神経科学や遺伝学などの生物科学に応用させる話はよく聞いていたのだけれど。これは人間が数字を理解する能力を神経科学の手法で調べてみようというもの。言語能力のない動物や0歳児がものを数える能力を持っているか、抽象的な思考ができるかどうか、を実験によって導こうとしているのはとても面白い。詳しい結論は本を読んでもらったほうがよいと思うが、6ヶ月児が数を認識しているというのも驚きだし、それを実験で確認する方法を考えたというのもすごいことだと思う。

第2部は数を理解するための言語の役割について。大人になると言語の力を使って、数字を抽象的に理解するようになるが、いわゆるアラビア数字や数字の数え方といった文化的なものが「数覚」にどれほど影響しているかを論じている。著者はフランスの実験認知心理学者なので、欧米の言語からみてアジア言語の数学的理解の優位性についても言及している。九九の価値を改めて再認識した。

第3部は解剖学的な症例から、数覚が脳の中でどのように形成されているかを調べている。脳科学の話でよくあるように、脳に損傷を受けた人が数覚にどのような障害が現れるか。抽象的な数字の概念と、順序や時間の概念とは障害の現れ方が違ったりしていて、まだまだ未解決の部分が多そうだが、引き算と足し算で別の神経回路が関与している!なんてことはわかってきているらしい。もちろん最先端のMRIやPETを使った実験についても触れられていて、そこから徐々にわかりつつあるようだ。単純に脳の特定の場所に関連しているわけではないし、数覚自体、言語的なもの、論理的なものなどと複合的なものらしい。

現在進行中の研究のようなので関心を持ち続けていこうと思う。