Rayleigh商 を増やす方向
もう少しこの話にお付き合いください。
復習(記号を少し変えた)。実n次元空間のm次元直交基全体からなるStiefel多様体を
とする。直交基が張る部分空間上に実対称行列 を縮退した行列 のRayleigh商は
となる。 の固有値を求めるときに、Rayleigh商のについて最小値の、についての最大値が のm番目の固有値と一致するというのが Courant の min-max 原理だった。
さて、でxを固定して、を変化させたときに大きくするにはどうすればよいか?
「方向」を調べるために、接空間を求めておくと、
となる。 を の関数と見て、 方向に微分してみると
となる。分子を内積を使って書くと、
すなわち、 は において、を掛け算する方向に近ければ、微分係数の値を大きくすることができることになる。いわゆる部分空間反復法では、を掛けてできる部分空間列を考えるが、そのことの裏付けのひとつであり、を掛けるのがある意味で最善だということもわかる。