知性の限界
知性の限界――不可測性・不確実性・不可知性 (講談社現代新書)
- 作者: 高橋昌一郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/04/16
- メディア: 新書
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理性の限界 - tkenichiの日記で読んだ「理性の限界」の続編。綿密な構成は著者の気合を感じさせます。前書に引き続いて、こちらも気合をいれて読む。
言語の限界、予測の限界、思考の限界、の三部構成で、どれもパラドックスから議論が始まっているところも、考え尽くされている感がある。
予測の限界で議論されているように、個別の現象は実は予測が不可能なものが多い。代わりに系全体の動きは予測できなくても、複雑系そのものに統計的性質が成立していると考えて、それを研究対象にしているような気がする。帰納法的な予測ができるのは線形の世界であって、世界は非線形の法則で支配されているものも多いから。むしろ今までは線形の世界しか理解の範疇に入っていなかったので、帰納法的な予測ができるという考え方になってしまったのではないだろうか。
思考の限界で議論されている「人間原理」は非常に興味深い。物理定数がこのように与えられている理由を、認識する人間の存在に結びつけて考えるのは、どうも違和感があるし、ましてそれを神の存在証明としてしまうのは、受け入れ難い。でも、この本の議論を読んでどうして自分がそう感じてしまうのかはうまく言語化できない。やはりロジカルな議論であっても、文化にバイアスされているものかもしれない。
いずれにせよ、非常に知的に刺激される面白い本だった。学生時代なら夏休み中ずっとこのテーマを考えて過ごしたいぐらい。