「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱
- 作者: 鈴木貴博
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2011/06/07
- メディア: 単行本
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よくある世代論だといってしまえばそれで終わりかもしれないが、それでもなるほどと思えてしまうものには、何らかの面白い見方がある。学術的でもないし、世代のラベリングの仕方もかなり強引なことは否めないが、組織に対する考え方を少年時代に影響を受けた漫画の世界観で読み解くという試みは、娯楽として面白い。漫画の作品論を追及したい人からすると期待はずれかもしれない。
ガンダム世代が「組織は理不尽なものと理解しつつも、そこに所属することをよしとしている」とし、ワンピース世代は「組織への所属よりも仲間への所属をよしとしている」とする。タテ社会的ガンダム世界観とヨコ社会的ワンピース世界観の対比、権力よりも自由を選ぶワンピース世代と矛盾を抱えた苦悩の美学のガンダム世代。確かにこのような視点で若者の行動規範を説明されると、身近なところで思い当たるところは誰しもあるだろう。
著者は「ガンダム世代」であり、自分たちの世代が貧乏くじを引いたと思う一方、下の世代の自由な行動に羨望を感じている、そういう屈折した気持ちをうまく表現している。これは著者が同じ「ガンダム世代」へむけてのメッセージに他ならないのだろう。
ただし、この本が世代論で終わっていないのは、5章以下で近未来の経済的な予測とそこでワンピース世代が取るであろう行動を予想しているところである。あくまでもある一つのシナリオを語っているだけで、予想というよりもこういう事態も想定して、心積もりをしておくことが、著者の言いたかったことだろうが、財政が破綻や、地下経済の増加は、十分にありうることではないだろうか。