対称行列の部分空間に関する断面
Rayleigh 商と Schur Complement をつなげるような話。
定義
実 n 次元空間の中の m 次元部分空間の正規直交基全体からなる Stiefel 多様体
実 n 次元空間の中の m 次元部分空間への射影作用素全体からなる Grassman 多様体
射影は
で与えられる。
射影作用素 R が与えられたとき、1-R は直交補空間に対応する射影作用素である。
n 次元対称行列 A と m 次元部分空間 M の正規直交基 Q が与えられたとき、Q への断面(以前の日記で縮退と呼んでいた、行列Rayleigh商ともいう)を とする。これは m 次元対称行列である。M への射影作用素 R が与えられたとき、制限射影を とする。これは n 次元対称行列である。
例
Q を j=1 番目から j=m 番目までの単位列ベクトルからなる場合 もとの対称行列 A をブロック化して とすると、
断面 であり、 とすると、 である。
の固有ベクトルを v とすると、 が の固有ベクトルである。A の固有ベクトルではないことに注意する。
補題
対称行列 A の制限射影 は、R の直交補空間 1-R 上 0 である。
問題1
M が A のいくつかの固有ベクトルが生成する部分空間ならば、制限射影 の固有値(0を除く)は、もとの行列 A の固有値と一致する。一般に部分空間をどれくらいうまくとれば、もとの行列 A の固有値を近似できるか。そのときの誤差は評価できるか。
問題2
今までの議論で正規直交性を除いて、Stiefel 多様体を基全体からなるものとしたときに、どこまで議論が成り立つか。
例
対称行列 とすると、対称性から が成り立つ。このとき とすると、Q は正規直交基ではないが、1次独立基ではある。
このとき、行列Rayleigh商 は Schur Complement に他ならない。