tkenichi の日記

毒舌皮肉系恥さらし日記

固有値の評価

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対称行列の部分空間に関する断面 の問題1のための準備として、対称行列の固有値を評価するためのいくつかの基本的な道具を紹介する。

まず最初は Bauer-Fike の定理。

定理(Bauer-Fike)

行列 A の固有値をλとし、それを対角化が与えられている行列  B = PDP^{-1}固有値で評価する。 D = \mbox{diag}(\lambda_1,\cdots,\lambda_n) とする。このとき、

 \min_{i} |\lambda - \lambda_{i}| \leq \||P\|| \cdot \||P^{-1}\|| \cdot \||A-B\||

が成り立つ。

これは、Aの一つの固有値を、Bの固有値の一番近いもので評価するもので、この差を A-B の行列ノルム*1で押さえるのであるから、あまり精度のいい評価とはいえない。最大固有値が行列の連続な関数であることを示す場合などは、この評価式を使えばよい。

摂動定理

対称行列 A,B について、それぞれの固有値を小さい順に並べて
 \lambda_1 \leq \lambda_2 \leq \cdots \leq \lambda_n
および
 \mu_1 \leq \mu_2 \leq \cdots \leq \mu_n
とする。このとき、

 |\mu_{i} - \lambda_{i}| \leq \||A-B\||_2

が成り立つ。

これは対称行列に限るが、順序も含めて評価できる。

*1:ベクトルのノルムから導かれるノルム