なぜ地球だけに陸と海があるのか
なぜ地球だけに陸と海があるのか――地球進化の謎に迫る (岩波科学ライブラリー)
- 作者: 巽好幸
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2012/03/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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その昔、高校の理科の授業でプレートテクトニクス理論のさわりを学んだことがあった。マントルの対流によってプレートが動き、それによって地震が発生したり、ヒマラヤが隆起したりするという知った。ただそこでは断片的な知識に過ぎなかった。その後の研究の発展で何がわかってきたのか、他の現象とどのように関係しているのか。この本はそれに答えてくれる。
岩石惑星のうちなぜ地球だけプレートが動くのか。それは水(海)が存在して、プレートが割れやすくなっているためだという。結果として地球には2種類の地殻、大陸地殻と海洋地殻が存在する。大陸地殻と海洋地殻は単に厚さの違いだけでなく、その組成も異なる。当然、どのようにしてできるのかも異なる。海洋地殻は海嶺で形成され冷却しながら厚さを増して移動し、沈み込み帯でマントルに沈んでいく。一方、大陸地殻は沈み込み帯で形成されるが、その過程は詳しいことはわかっていない。
この本では、大陸地殻の形成過程の研究プロジェクトでわかってきたことを、かなり詳しく、また研究の現場のワクワク感とともに伝えている。地球の内部を直接調べることができない以上、研究の手段は地殻に存在する岩石や、地震のときの波の伝達速度ぐらいしかない。そこから100万年、1000万年オーダーのマクロな時間スケールで起こっている大陸ができるメカニズムを予想し、それを検証していく作業は、想像する以上に難しいものであろうが、またそれと同時に非常に知的興奮を覚えるものだろう。さらに、マントルの沈み込み帯で起こっている地球内部の大陸生成のプロセスを工場にたとえて、原料、廃棄物、製造工程を説明しようとしているのは人類の英知を感じた。
地球上に水が液体として存在するということが、大陸の形成にまで影響を及ぼし、それで地球内部との物質の循環が生まれる。地形の多様性だけでなく地表の鉱物の多様性すら水の存在が大きな影響を及ぼしていることに、神秘的なものを感じざるをえない。