ペトロス伯父と「ゴールドバッハの予想」
ペトロス伯父と「ゴールドバッハの予想」 (ハヤカワ・ノヴェルズ)
- 作者: アポストロスドキアディス,Apostolos Doxiadis,酒井武志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2001/03
- メディア: 単行本
- 購入: 6人 クリック: 94回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
連休中に久しぶりに小説を読む。
数学者を題材にした小説は多数あるが、問題が解けたときの喜びではなくて、解けないときの苦しみをここまで表現しているものは少ないのではないだろうか。自分の才能を信じて、難問にチャレンジしようとする意気込み、誰かに先を越されてしまうのではないかという恐れ、そしてうまくいかなかったときの絶望。誰もが経験する感情でもある。しかし数学者の場合は特に自分の能力の結果として受け入れなくてはならず、まさに精神を削る営みであるということが主人公の伯父さんの告白を通して語られていて、引きずり込まれる。その伯父さんはゴールドバッハの予想が解けなかったことの言い訳をあるものに求めるのだが、それは・・・ネタばれなので伏せておこう。
カラテオドリ、ハーディ、ラマンジャン、チューリング、およびゲーデルなど20世紀前半の実在の数学者も登場しているので、まるでノンフィクションのようにも思えてしまう。もちろん脚色はあるだろうが、実際の知られているエピソードから想像される性格そのままにこの小説にも登場している。
主人公の父親が物語の最初に言った「人生の秘訣とは、達成可能な目標を定めることだ」を物語の最後に主人公の友人が繰り返すが、その言葉から感じる印象が大きく変わってしまっていた。