リーマン計量の差の変分3
連続体力学の概念とリーマン幾何の概念の対応を考えてみる。をリーマン多様体の間*1の微分同相写像とする。この写像は等長的(すなわち
)であることは仮定せずに、等長的なものからどれくらい離れているかを考える。
接ベクトル束に定義される微分写像を とする。これは連続体力学では変形勾配テンソルと呼ばれる。
接ベクトル束の間の束写像 についてリーマン計量によって転置写像
が定義される。
また、自分自身への束写像 が対称であるとは
が成り立つ場合とし、正定値であるとは について
が成り立つことをいう。
なる自分自身への束写像が定義できる。これらは正定値対称である。連続体力学ではを右Cauchy-Green変形テンソル、
を左Cauchy-Green変形テンソルという。
と
は正定値対称写像であり、
は直交写像である。
は右分解と左分解に共通の直交写像である。次の図式は可換である。
直交写像 は次の図式も可換にする。
また、 および
である。平方根は正定値対称テンソルの値をとるという意味で一意に決まる。
を
の周りでマクローリン展開すると、
である。これを使って
を得る。同様に
を
の周りでマクローリン展開すると、
である。これを使って
を得る。それぞれの1次の項
、
を 連続体力学では Lagrange 歪、Euler 歪と呼ぶ。
リーマン幾何 | 連続体力学 |
微分写像 |
変形勾配テンソル |
右Cauchy-Green変形テンソル | |
左Cauchy-Green変形テンソル | |
右ストレッチテンソル | |
左ストレッチテンソル | |
Lagrange 歪 | |
Euler 歪 |
*1:LはLagrange表示、EはEuler表示を意図している