tkenichi の日記

毒舌皮肉系恥さらし日記

子育ての大誤解

子育ての大誤解―子どもの性格を決定するものは何か

子育ての大誤解―子どもの性格を決定するものは何か

「子育て神話」すなわち、子供の成長に影響を及ぼすのは親の育て方である、という仮説(定説)に真っ向から反論している。現在のこの分野の議論の前提を覆すような説を唱えていること、児童教育や発達心理学の本流の研究者以外のところからの反論であること、今までの子育て神話の根拠となってた事例の統計的処理や解釈に疑問を投げかけていること、などなど非常に面白い本である。


では何が子供の成長に影響を与えているのかというと、著者によれば、子供の社会化がなされるのは、彼らが属する集団である、とする集団社会化説を挙げている。この本で挙げられている事例を読んだ限りでは、単純な「子育て神話」よりは信憑性があるように思えるし、自分の子供のころの経験からもしっくり来る点は多い。なんだか「子育て神話」は建前論的なところとか、ある意味宗教的なところも感じられるので、それに比べれば集団社会化説の方が科学的かな。とは言っても程度の問題であることには変わりなく、親の育て方がまったく影響がないとは思わない。神話を否定することで、育児ノイローゼになる親が減れば、それでいいかな。


本論ばかりでなく、文中で紹介されているトピックにも興味を覚えるものがいくつかあったので、自分の記憶のために列挙しておく。

  • 自閉症の子供達が相手の視線がコミュニケーションの手段であると言うことに気付かないという「マインドブラインドネス
  • 2つ以上の文化に属する子供はそれらの間を行ったり来たりする「コードスイッチング」を行う。
  • 人間とチンパンジーの子供を一緒に育てると、人間の方がチンパンジーに似てくる。
  • 子供と大人の間のカテゴリー(ティーンエイジャー、ヤングアダルトなど)が生まれたのは歴史上に見てつい最近のことである。
  • 反喫煙広告についての著者のアイディア:喫煙は大人がティーンエイジャーに対して企んだ策略であることを宣伝する。