tkenichi の日記

毒舌皮肉系恥さらし日記

コンピュータビジュアリゼーション

2000年に出た本なので、こういう分野では結構古くなっている話が多いんだけど、これは(ソフトウェアの紹介などを除いて)ノウハウではない理論的なところをしっかりおさえているため、古さをそれほど感じない。

前半はCGと可視化の一般論。といってもCGの話よりもサイエンティフィックビジュアリゼーションのための様々な技法を網羅的に紹介し、用途に応じた向き不向きなどを解説。アルゴリズムや実装法までは書いていないけど、各章末に詳しい参考文献のリストがあるのでありがたい。フロービジュアリゼーションにおけるスポットノイズ法、LIC法などは結構詳しく解説。

後半はインフォメーションビジュアリゼーションに多くのページを割き、情報の検索システム、ビジュアルデータマイニングについてまで言及してある。情報検索の可視化システムとして MWMD、GADGET/IV なども紹介。

3次元ユーザインターフェースとして VOGUE、階層構造の可視化システムとして FSN 、H3、NattoView などを紹介。H3 みたいに双曲幾何を応用して無限のものを有限の中に畳み込むという手法は、ユークリッドの世界にいると最初は違和感あるかもしれないけど、なれると結構快適。というか、うまい方法です。

全体に様々な分野の可視化の技法、ソフトウェアを横断的に紹介していて、専門外の分野でどういうものが使われているのか知ることができる。現状どういう技術があるのかを手っ取り早く知ることができるので、これから可視化ソフトを使ったり作ったりしようという人には重宝するんじゃないかな。ただ、一応シリーズとしては「インターネット時代の数学」を謳っているのだから、もう少し数学の話があっても良かったのでは、と思いました。