貧乏クジ世代

貧乏クジ世代―この時代に生まれて損をした!? (PHP新書)

精神科医による世代論。1970年代生まれの現在20代後半から30代前半に当たる世代を貧乏クジ世代と名づけ、その特質を語るエッセイ。

しかし、分析に基づくものではなく、著者の周りの人や自身の経験から感じられたことと言う印象論に終始している。世代の代表として挙げられている人物や、この世代が体験したこと、読まれている本などの取り上げ方も、論旨に都合のいいことを取り上げているような気がする。バブル経済と男女雇用機会均等法が何度もキーワードとして出てくるが、この世代の特徴との因果関係まで導き出してはいない。「貧乏クジ世代」というキーワードであまりに色々なことを説明しようとしていないか？分析本ならもっと精緻な議論をするべきだし、悩んでいる人、不安な人への処方箋なら、もっと具体的な方法を根拠とともに示してほしいところだ。

自分自身の世代だから、他の人から言われることへの違和感があるのかもしれない。

時代の雰囲気に対して、著者の何か書きたい！何か言いたい！という気持ちはわかるが、多作な作家の新書は中身が薄いということを改めて実感してしまう本になってしまった。