実験経済学入門
- 作者: ロス・M・ミラー,川越敏司,望月衛
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2006/03/02
- メディア: 単行本
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2006年3月に出版された実験経済学の翻訳本。社会科学では実験は不可能と言われていたが、現在では市場の様々な現象を再現してメカニズムを解析するため、または市場のシステムを設計する際にプロトタイプモデルで検証するために実験が使われるようになってきた。それが実験経済学で、たぶん日本語で読める一般向けの本としては初めてのもの(専門書はいくつか出ているみたい)。
ブルーマンデーの大暴落がどのようにして起こったのか、という話から始まり、価格決定の仕組みなどいわゆるミクロ経済学の基礎事項をトピックをもとに確認しながら、チェンバレンとヴァーノン・スミスの「実験」を解説。需要と供給の法則にしたがっていること、バブルを実験で再現することが可能であることなどを紹介。
第2部はオプションなどの金融工学の概説と、それが市場に与えた影響など。第3部は株式バスケットの取引ができるスマートマーケット(賢い市場)の思考実験、周波数帯の割り当てのためのオークションなど。
経済学で実験なんてできるわけないと思っている人がまだ多いのかもしれないけど、実験が万能ではないことはもちろんわかっていて、どのような問題があるのかについても論じられている。大変面白い本です。一度読んだだけでは消化不良もあるので、何度か読み返して、トピックごとにコメントするかも。ここで言う実験は、市場を再現するためのものよりも、実験で「よい」市場を作ってそれを外の世界に移すためのもの、という性格のほうが強いみたいです。自然科学で言うと物理系の自然現象や理論を実験で再現するのを目的とした実験と言うよりも、新しい化合物や素材の開発をする化学系の実験の方が感覚として近いのかな?
第9章「シグナリングと指数」にマイケル・スペンスの高等教育産業における市場シグナリングモデルの話が載っていて、これは別の意味で興味をそそりました。マイケル・スペンスの業績について、日本語の一般向けの本をご存知の方がいれば、教えて欲しいです。