tkenichi の日記

毒舌皮肉系恥さらし日記

ヤバい経済学

ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する

ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する

話題の本。やっと読めました。一般の人が身近に感じられる題材に対して、常識とは異なる視点で見て、データを統計的に経済学的に分析して、通念をひっくり返すような結論を導いています。社会科学(あえて経済に限定しない)の研究の面白さってこういうところにある、というのを強く感じ、知的好奇心をグイグイと刺激してくれました。

問題の選択がいい。第1章は「学校の先生と相撲の力士、どこがおんなじ?」という題なのですが、一見違うものに見えるものが実は同じ原理で動いていることをものの見事に解き明かしています。その他、情報の非対称性として不動産屋さんの例、因果関係と相関関係など統計にまつわるトリックとして犯罪者の数の変化の例など、面白いネタが満載。

以前に読んだ「子育ての大誤解」もしっかり俎上に乗せていて、親がどのくらい子育てにとって重要なのかという問題をこの本でも取りあげている。ここではもちろん教育理論を語るのではなく、統計的手法による分析をする。アメリカ教育省の初等教育の縦断的研究(ECLS)のデータを回帰分析して子供のいろいろな属性と学校の成績の相関を調べている。全部紹介するとネタばれになってしまうので一つだけ挙げると、「家に本がたくさんある」は成績と相関をしていて、「ほとんど毎日親が本を読んでくれる」というのは成績とあまり相関していない。おもしろいですよね。著者らの分析は本がたくさんあることは、成績が良いことの原因なのではなく、知恵を映すもの、だということ。

インセンティブについては、経済的インセンティブだけでなく、社会的インセンティブ、道徳的インセンティブもあり、通常の経済学では最初の一つだけを扱っているから行動をうまく説明出来ないんだという立場。また、インセンティブはその意図したとおり働くよりもむしろ、その制度を出し抜こうとするように働く、という。

これを機会に評価とインセンティブと行動の関係をまた考えてみようと思ったのでした。