「心理テスト」はうそでした。
- 作者: 村上宣寛
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2005/03/30
- メディア: 単行本
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統計学とか、社会科学の指標についての本をいろいろ読んでいるうちにたどり着きました。題名からはもっと軽いものかと思っていましたが、有名な心理テストを正攻法で論破している。痛快である。
血液型人間学なんてまともな人なら信じていないものだと思っていたけれど、マスコミなどに何度も取り上げられているうちに、社会的証明という心理状況で信じてしまうのがたちが悪い。それほど親しくない人たちと軽い会話をしているときにこの話題が出てくると始末に困る。まじめに否定するのも場をしらけさせるだけだしと思って、さらっと流してしまうのだけれども。この本では卒論で血液型人間学をテーマに選んだ学生の研究をネタに、統計的検定の意味、心理テストの検証法などを説明して、結論として日本を代表するトンデモ学問だとしている。
ロールシャッハ・テストについては著者らは昔に解説書を出版していたのだが、その過程で信憑性に疑問を持つようになり、結局弁別できない無能のテストだと結論づけている。ではこの代用として正常者と異常者の弁別をするテストは存在しているのか、という問いには答えていなかったのが残念。裁判などで刑事責任を問えるか精神鑑定をしているけど、それも当てになるのかどうか心配になってきました。
YG、MGといった性格テストについても、調査そのものの信頼性や尺度や分類の怪しさを指摘している。現代心理学ではいわゆるビッグ・ファイブ仮説という、外向性、協調性、勤勉性、情緒安定性、知性、が基本的な性格の次元だとして認められているそうです。YGが測定しているとする12の性格特性は幻想で、解説書は捏造、すり替え、うそのオンパレードなのだそうな。
就職試験でよく使われるクレペリン検査についても、そもそも作業の変動量が信頼性の低い指標であることを指摘して、安易に性格特性と結びつけることを問題としている。
内容は硬いけど、語り口は講義を受けているようで、すぐ読めます。ぜひ。