自分の体で実験したい
- 作者: レスリーデンディ,メルボーリング,C.B.モーダン,Leslie Dendy,Mel Boring,C.B. Mordan,梶山あゆみ
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2007/02
- メディア: 単行本
- 購入: 4人 クリック: 46回
- この商品を含むブログ (53件) を見る
科学者の伝記ものとしては異色の、自分を実験台とした人たちの物語。いわゆる一般に著名な科学者はキュリー夫妻ぐらいで、あとはむしろその専門分野でのみその名を知られたような人々が多いです。
しかしこの変人たちのエピソードが面白いこと。自分の身を危険にさらしてでも好奇心が打ち勝つような人たちなのだから、変わり者であることは間違いないでしょう。笑気ガスを自分で吸って親知らずを抜いてみたホレス・ウェルズ、ペルーいぼ病の患者の血液を自分の体内に入れて結局命を落としてしまったダニエル・カリオン、地上の高速ロケットにのって35Gまでの衝撃力に耐えたジョン・ポール・スタップなど。彼らのおかげで医療技術が発達したり、病気の原因が解明されたりして、多くの恩恵を受けています。
傾向としては、20世紀以前はある意味無鉄砲で好奇心にあふれた科学者が、個人もしくは少人数のチームで実験を行ったが、現在は科学のプロジェクト自体大規模になっているので大人数のチームのうちの誰か一人が実験台になるという体制みたいですね。
本の体裁として、本文のエピソードはその当時の状況に即して記述し、注釈で彼らのその実験が現在どのような発展しているのか、その分野の現在の状況がどうなっているのかを記述しているスタイルはとてもよかった。伝記ものというと、その時代を忠実に記述することに重点がおかれていることが多く、現代との関わりあい合いが欠如していることが多いから。
自分の責任で無茶をすることの自由を認めることも、人間社会全体の発展としては必要なのかなと思いました。