なぜ上司とは、かくも理不尽なものなのか
- 作者: 菊澤研宗
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2007/08/30
- メディア: 新書
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普段はこういう、いかにもサラリーマン向け、という本は手に取らないんだけれど、珍しく読んでみました。これがアタリでした。事例そのものやそこから引き出されるアドバイスはありきたりなものなので、そこは期待しないこと。
何が面白いかというと、サラリーマンなら誰でも日々感じている組織の問題を、経済学の概念を使って説明しているところです。基本となっている考え方は限定合理性で、「エージェンシー理論」「取引コスト理論」「所有権理論」という組織の経済理論の考え方を使って、不二家の事件や雪印の事件を例に、なぜ組織が非倫理的な行動を取ってしまうのかを説明しています。企業の不祥事の原因を個別の事例ごとに分析したものは多くあると思いますが、組織の経済学の視点から見てみるというというのは面白いですね。
後半はダメな上司の合理性を限定合理性の考え方から分析し、最後にそういう上司を持った部下はどうすればいいかを説いています。過去の成功経験にこだわる上司を、その成功のために投資したコストに着目して、取引コスト理論で説明したり、無意味な会議がなぜ開かれるかということを、所有権理論を使って所有権をあいまいにしてプロジェクトの責任を多くの人に負担させるためだと解き明かしたり。まあ、大学の先生が書いた本なので、分析は面白いけれど、具体的な行動指針がビジネスマンの視点からすれば陳腐なのは、ご愛嬌ということで。