tkenichi の日記

毒舌皮肉系恥さらし日記

経済成長神話の終わり

経済成長神話の終わり 減成長と日本の希望 (講談社現代新書)

経済成長神話の終わり 減成長と日本の希望 (講談社現代新書)

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国家戦略には必ず経済成長のための方策が織り込まれている。その指標となるのは、GDPである。普通、雇用問題も、年金問題も、国際的な地位の維持も、経済成長によって解決できるとされている。この本では、その前提を疑うことで、別の道で持続的な社会を作り出すことが出来るのではと提言している。それが「減成長による繁栄」である。前半は経済成長が雇用問題や年金問題を解決しているのではないことの説明で、後半が経済成長なしで反映するための方法論である。

考え方自体は共感できる部分も多い。たとえば、新古典主義理論では、使用価値が軽視されていること、労働生産性を上げても余暇が増えたり賃金があがったりしない、など。GDPが成長し尽くした状況を思考実験して、それでぜんぜん幸せとはいえないと断じたり、減成長による繁栄の方法の議論が散漫なところは少し残念なところ。これは別に著者が悪いのではなくて、現在起きている矛盾を分析ことよりも、未来を設計するのほうがずっと難しい、ということにすぎない。

資源も人間の可能性も無限にあり、社会は発展し続けると思われた時代に作られた社会のルールを、そのまま線形で外挿して現代の世に当てはめるってことが無理があるんだろう。そのときには予測できなかったことが起きているのなら、ルールを修正していくのは当然だと思うのだが。少なくとも資源は有限だし、人間が使える時間も有限なのでモノの使用価値の最大値の総和も有限だ。ある程度国の豊かさが実現したらそれ以上成長させることは難しくなる*1のは当然で、今の状況は成長が目的になってしまっているのかもしれない。

*1:ロジスティック式のようなもの