tkenichi の日記

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重力とは何か

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重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る (幻冬舎新書)

重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る (幻冬舎新書)

ちょうどヒッグス粒子について何か発表があるかもしれないと、ニュースで報じられているときに、最新の重力研究をわかりやすく解説した本が新書で出版されていた。サイエンスライターが噛み砕いて解説した本ではなく、最前線の研究者が書いているので、現在どこまでわかっていて、研究者がどういう問題意識を持っているのかがわかるとても貴重な本。重力の本質に手が届きそうになっている研究者の興奮を感じることができた。相対論や量子力学の啓蒙書では、よく古典力学や通常の認識では理解できない点を強調しすぎるきらいがあるが、物理学者はその「不思議なこと」を研究の道具として使って、さらに未知の領域に挑んでいる。それを著者は「物理学者は急進的な保守主義者」と評しているが、この感覚に共感できるかどうかがこの分野を理解するための試金石なのかもしれない。

理論だけでなく、一般相対論やブラックホール理論が正しいことを検証するにはどのようなことがわかればいいのかということを詳しく説明していることもとても面白い。

もちろん理論そのものの説明もとても理解しやすい。
特に、重力が空間の歪みと関係していることを、2次元で説明して、そこから3次元に類推させているのは感動的にわかりやすい。なぜリーマン幾何が一般相対論に必要かも腑に落ちる。
また、ミクロの世界を説明する理論に究極があるのかどうかという問いの答えが「ある」ということをわかりやすく説明している。観測に必要なエネルギーの波長とブラックホールの事象の地平線が同程度になると、それよりも小さいものは観測することが原理的に不可能になる。つまりそこが理論の終着点になる。

この分野で日本人がどのように貢献しているのかも全体の話の流れの中に出てくる。ボゾンの発見の米谷民明、ハイゼンベルク不確定性原理を拡張した小澤正直、弦理論を提案した南部陽一郎など。そしてファインマンホーキングがなぜ天才と呼ばれているのかも。

ニュースで宇宙論や重力理論のことに関心を持った人には実にタイムリーな本だ。今読むべし!