tkenichi の日記

毒舌皮肉系恥さらし日記

心理学への異議

心理学への異議―誰による、誰のための研究か (心理学エレメンタルズ)

心理学への異議―誰による、誰のための研究か (心理学エレメンタルズ)

「心理テストはうそでした」の関連本です。著者は心理学の研究者なので、「異議」と言っていながらも、心理学が歴史的に戦争やプロパガンダにどのように使われたのかを批判的に紹介しながら優れた入門書になっています。もっと過激な本かと期待したのですが、ある意味まじめな本でした。


特に面白かったのは「心理学におけるバイアス」と言う第4章です。心理学の研究にはすべて何らかのバイアスが含まれている、と言うことの解説です。私は人文・社会科学の研究には、と拡大解釈してもいいかとも思います。自分の属する集団の観点から物事を見るエスノセントリズムから自由になることは難しさについて、この章でも、心理学の研究は主にアメリカで行われ、社会心理学の論文における被験者も高等教育を受けた白人に大きく偏っていることなどを挙げ、アメリカの心理学がエスノセントリックだとしています。また、いわゆる「平均人」のトリック、すなわちすべての属性に関して平均値となる人間などいない、ということから心理学が導き出す平均的な行動パターンをとるような人間は誰もいないことがありうることを紹介しています。


心理学とは関係ないけど。

最近CGMとか集合知とか言って、ネット上の書き込みや口コミ情報を評価する風潮があるけど、ネットの情報って発言している階層もすごく限られているし、基本的にエスノセントリックな発言が多いから、バイアスがすごくかかっていると思うんです。それを無視して(気づかないふりして)礼賛するのは眉唾だなあと思うわけです。すべてが間違っているわけではないんだろうけど、ネットビジネスをしている人間のプロパガンダの側面も結構あるんじゃないかなあ。