tkenichi の日記

毒舌皮肉系恥さらし日記

トンデモ科学の見破りかた

トンデモ科学の見破りかた -もしかしたら本当かもしれない9つの奇説

トンデモ科学の見破りかた -もしかしたら本当かもしれない9つの奇説

いわゆるリサーチリテラシーの本をいくつか読んできて、この本にたどり着きました。オカルト系のトンデモ学説やはちゃめちゃ統計処理をパロディ的におちょくって遊ぶ本だと思い込んでいたら、結構まじめな本でした。著者はジョージ・メイソン大の物理学の教授で、したがって社会科学的なことよりも自然科学的なことをテーマとして多く取り上げています。一般に社会科学系のリサーチリテラシーについては、主に統計処理上のトリックを見破る方法や、信じてしまう側の心理的な分析に重点が置かれていますが、これは自然科学的な手法で、実験結果や論理からその学説が「トンデモ」かどうかを再検証しています。したがって、結論としても論理的には排除できないものは可能性として残しておくという立場でトンデモ度ゼロとしています。トンデモ論を論破するという結論ありきでなく、慎重に見極めようという態度は、論文を批判的に読む練習にもなります。


内容は「銃を普及させれば犯罪率は低下する(著者の評価はトンデモ度3)」「エイズの原因がHIVと言うのは嘘(同じく3)」「紫外線は身体にいいことのほうが多い(おなじく0)」などの9つのテーマを取り上げています。最初の銃と犯罪率の関係は社会学でもよく取り上げられるテーマなので、結論もまぁよくありがちなものです。その割には(アメリカの)政治の世界ではこの結論が採用されているとは思えないですけどね。


第7章の「石油、石炭、天然ガスは生物起源でない」という説の存在は私は知りませんでしたが、この章が一番面白かったです。元はトマス・ゴールドという科学者が提唱した説らしいのですが、炭化水素は地球のもともとの構成成分のひとつであって、石油や石炭はそれがしみ出てきたものだとするものです。生物起源説の根拠とされてきた含有分子や光学活性といった性質や、生物起源説では説明できない事実についてトマス・ゴールドの説を検証しています。結論として著者はトンデモ度ゼロを与えています。もちろん正しいと言う意味ではなくて、その可能性も否定できないという意味です。この理論を信じて賭ける石油開発会社とかがあってもよさそうだなあ。