tkenichi の日記

毒舌皮肉系恥さらし日記

子どもが減って何が悪いか!

子どもが減って何が悪いか! (ちくま新書)

子どもが減って何が悪いか! (ちくま新書)

先週「破産する未来」を読んだので、今週は日本の少子化問題を論じた本を読むことにしました。でもこの本は少子化問題の議論としてはむしろ異端に属するものかもしれないです。それはこの刺激的な題名から半分は予測できたのですが。

「破産する未来」は将来世代の負担の見積もり方を元にした経済学的な本でしたが、これは社会調査を元に少子化の要因を分析して、どういう政策が効果があるかを論じる社会学的な本です。前半はリサーチリテラシー、後半は少子化問題の再定義、といった内容です。

前半は政府が進めようとし、マスコミがそれに乗っかっている「男女共同参画社会が実現すれば、少子化を防げる」というトンデモ説(著者曰く)に対する反論です。内容は、サンプルの取り方、相関と因果関係のとり違い、擬似相関という、重回帰分析を行うときに陥りやすい定番の誤りを暴いていくのですが、著者が自分でデータを集めて再分析し、その過程をオープンにしているところは共感できます。結論は「男女共同参画少子化対策ではない」と言う一文に尽きます。

後半は統計の話じゃなくて著者の主観も入っている部分なので、賛成できるところとできないところがありました。相対所得仮説や人口容量の概念で少子化を説明しているところは理論的には説得力ありますが、実証的には弱いですね。子どもを産む産まないと言う選択の自由は保障されるべきで、特定のライフスタイルに対するインセンティブを与えるべきではないという主張や、リスクはすべての世代で負担すべきと言う主張には賛成です。

統計の分析方法や他の少子化論に対するツッコミの入れ方はほぼ納得なのですが、「破産する未来」と違って政府や個人に対してこれからやってくる少子化社会についてどう対処すべきかと言う確固とした提言がなかったのは不満でした。