共感覚者の驚くべき日常
- 作者: リチャード・E.シトーウィック,Richard E. Cytowic,山下篤子
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2002/04
- メディア: 単行本
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以前読んだ「進化しすぎた脳」など、時々脳科学の本が読みたくなる。
これはある神経科の医師が「共感覚」を持つ人に出会い、そこから過去の隠れていた文献を調べたり、実験を行ったりして共感覚のなぞに迫っていく過程を書き記したドキュメント。途中、現代の脳科学の概要を著者自らが学んできた履歴と絡めながら紹介しているので、予備知識がなくても読める。こういうのが欧米の啓蒙書のいいところ。
共感覚とは、ものを食べるときに指先に形を感じたり。音を聞くと色が見えたりすること。黄色い悲鳴、のような比ゆ的な意味ではなく、知覚として感じるもの。古来から記録として残っていたがほとんど脳の現象とは認識されずにいた。共感覚者の間でも、音に対して同じ色が見えるというわけではない。
著者は実験により、共感覚の発生する場所が左脳の辺縁系であるという結論を出し、さらに理性と情動が共進化していく、と考えて、
共感覚は、実際は私たちが誰でも持っている正常な脳機能なのだが、その働きが意識に上る人が一握りしかいないのだ
という説を提示している。