基礎数学力トレーニング
- 作者: 根上生也,中本敦浩
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2003/10
- メディア: 単行本
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題名から高校数学や大学初年級の数学のドリルのようなものを想像したのなら、大外れです。基礎数学力とは、計算方法や公式を使う能力ではない、と「はじめに」にいきなり書いてあります。「絵を描いて、言葉で考え、自分自身の理解を根拠に問題解決をする数学」ということですが・・・。ということで本文を読み始めると、これが結構刺激的なのです!
ここに出てくるのは例えばこんな問題。
辺の長さが同じとき、どの多面体が一番大きいでしょうか?(P8)
1から1000までの自然数の中から、どの2数についても互いに他で割り切れないように、500個の数を選んでください。また、501個でも、そういう選び方は可能でしょうか?(P52)
n段の階段格子の中に含まれる長方形の個数を求めよ(P86)
14×14のマス目を1×4のタイルで敷き詰めることができるでしょうか?タイルは縦に置いても、横においても構いません(P109)
パズルのような問題ですが、数学パズルの本でもありません。むしろ、問題の根底にある構造や原理を見つけることに重点を置いていて、解き方を説明するというよりも、そういう見方で見ると問題が自明になる、という説明をしています。
鳩の巣原理(とこの本で呼んでいる)や双対性、偶奇性など、構造から逆に問題を作ってネタにしているきらいがなくはないですが、それでも他の数学本とは違う切り口で面白いです。
多くの人には「数学≒計算」、少し教養のある人でも「数学≒計算+論理」というイメージだと思いますが、それ以外のところに大事で面白いものがある、ということを教えてくれます。本の最後で著者はこういう数学を学校教育に導入する提言をしています。教育問題が絡むと一概に賛成はできないのですが、こういう教育が欠けているのは確かですね。
オフトピですが、学校数学からの呪縛から解放されるための禁則事項15項目のところで、「わかった」と思う閾値が低い学生君の話が出てくるのですが、社会に出ると「わかった」という自己申告だけで評価が高くなったりするので、閾値が低い人が結構いて困りものです・・・・・。